作品情報
キャスト
アイ・アム・アリのあらすじ紹介
【起】アイ・アム・アリ
若き日のカシアス・クレイが、ソニー・リストンを破り世界ヘビー級王者になるまでを描きます。
彼の陽気で自信に満ちたキャラクターと、彼を支える家族や友人との電話の音声テープが紹介され、プライベートな一面が垣間見えます。
この時期、彼はまだ人種差別が根強い社会で自身のアイデンティティを模索しており、マルコムXとの交流を通じてイスラム教への傾倒を深めていく過程が描かれます。
ボクシング界の寵児として華々しく登場する一方で、彼の内面では大きな変化が始まっていたことが、本人の肉声を通して生々しく伝えられます。
家族との何気ない会話の中に、彼の優しさやユーモア、そして将来への野心が滲み出ており、伝説の男の原点がここにあります。
【承】アイ・アム・アリ
モハメド・アリと改名し、イスラム教への改宗とベトナム戦争への徴兵拒否を宣言します。
この決断は、彼をアメリカ社会の敵と見なさせ、チャンピオンベルトとボクサーライセンスを剥奪されるというキャリア最大の危機を招きました。
彼は「俺の敵はベトコンじゃない」と述べ、自身の信念を貫き通す姿勢を鮮明にします。
この時期、彼は試合ができない苦しい日々を送りますが、大学での講演活動などを通じて公民権運動の象徴的な存在となっていきます。
家族や親しい友人との電話では、世間の非難に対する苦悩や、それでも揺るがない自身の正義についての思いが語られます。
彼の戦いの場がリングの外、つまりアメリカ社会そのものへと移っていった、極めて重要な転換期が描かれます。
【転】アイ・アム・アリ
3年半のブランクを経て、アリはリングに復帰します。
しかし、全盛期を過ぎた彼を待っていたのは、ジョー・フレージャーとの死闘や、無敵の王者ジョージ・フォアマンとの対決でした。
特に「キンシャサの奇跡」として知られるフォアマン戦は、本作のクライマックスの一つです。
圧倒的不利と予想される中、アリは「ロープ・ア・ドープ」戦法を駆使し、疲弊したフォアマンを8ラウンドでKOします。
この勝利は、単なる王座奪還以上の意味を持ち、不屈の精神の証明として世界中に感動を与えました。
この時期の音声テープには、試合前の緊張感、娘たちとの愛情あふれる会話、そして勝利後の安堵と喜びが記録されており、英雄の仮面の下にある一人の父親、一人の人間としての姿が浮き彫りになります。
【結】アイ・アム・アリ
栄光の頂点に立ったアリですが、彼のキャリアは徐々に終焉へと向かっていきます。
長年の激闘の代償として、彼の身体はパーキンソン病に蝕まれ始めます。
ラリー・ホームズ戦での無残な敗北は、絶対的な王者の時代の終わりを誰の目にも明らかにするものでした。
映画は、彼の現役引退後の姿、特に1996年アトランタオリンピックの聖火台で震える手で聖火を灯す感動的なシーンで締めくくられます。
かつての雄弁さや力強さは失われても、彼の瞳の奥に宿る闘志と尊厳は消えていませんでした。
家族との最後の電話のやり取りは、彼がリングを降りてもなお、愛する者たちにとっての英雄であり続けたことを物語ります。
本作は、チャンピオンとしての栄光だけでなく、病と闘いながらも平和と愛のメッセージを発信し続けた「人間モハメド・アリ」の生涯を、彼の最もプライベートな肉声を通して描ききり、感動的なフィナーレを迎えます。
アイ・アム・アリの感想
この映画は、単なる偉大なボクサーの伝記ではなく、「人間モハメド・アリ」の魂の記録です。
彼自身が録音したプライベートな音声テープを軸に構成するという演出が極めて秀逸で、リング上の英雄ではなく、一人の父親、一人の夫、そして信念に悩む一人の人間としての彼の息遣いをすぐそこに感じさせます。
特に、愛娘との電話で交わされる他愛ない会話は、彼の深い愛情を浮き彫りにし、胸を打ちます。
栄光の裏にあった苦悩、人種差別や戦争への抵抗、そして晩年のパーキンソン病との闘いまで、彼の人生の光と影を包み隠さず描き出すことで、信念を貫くことの尊さという普遍的なメッセージを強く訴えかけてきました。
伝説の男が遺した肉声に耳を傾けるうち、深い尊敬の念と共に、時の流れの切なさが込み上げ、静かな感動に包まれる作品でした。
アイ・アム・アリのおすすめ理由
英雄モハメド・アリの公的なイメージの裏側にある、極めてプライベートな「声」に焦点を当てた点が最大の評価ポイントです。
彼自身が録音した膨大な音声テープという一次資料を用いることで、他のどの伝記映画やドキュメンタリーとも一線を画す、生々しい人間ドラマを描き出すことに成功しています。
家族との愛情あふれる会話や、苦悩する肉声は、伝説の人物を我々のすぐ隣にいる一人の人間として感じさせてくれます。
構成も見事で、音声とアーカイブ映像が巧みに組み合わさり、彼の人生の節目節目における感情の機微を見事に表現しています。
満点にしなかったのは、ボクシングファンにとっては既知の映像も多い点ですが、それを差し引いても、アリの魂に触れることができる貴重な作品として高く評価します。
アイ・アム・アリのその他情報
特定の大きな映画賞の受賞歴はないものの、批評家や観客からは高く評価されています。
特に、これまで光が当てられてこなかったアリのプライベートな一面を、本人の肉声を通して描き出した点が高く評価され、「最も人間的なアリのドキュメンタリー」として多くのファンに支持されています。


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