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唄う六人の女のあらすじ紹介
【起】唄う六人の女
車の運転を誤り、人里離れた深い森の奥で事故を起こした萱島(竹野内豊)と宇和島(山田孝之)は、意識を取り戻すと、美しくもどこか奇妙な雰囲気を纏う六人の女たちが住む村にいました。
萱島は亡き父から相続した土地を売るため、宇和島はその土地で怪しげなビジネスを目論み、この山を訪れたのです。
携帯電話の電波も届かない隔絶された場所で、二人は女たちによって監禁されてしまいます。
女たちは一切言葉を発さず、ただ謎めいた唄と踊りを繰り返すばかりで、その目的は全く分かりません。
外界から切り離された極限状況の中、二人の男たちは得体の知れない恐怖と焦燥感に苛まれながら、不気味な共同生活を強いられることになります。
【承】唄う六人の女
萱島と宇和島は、村からの脱出を何度も試みますが、その度に女たちの不可解な力によって阻まれ、失敗に終わります。
女たちは彼らに食事を与え、身の回りの世話を焼く一方で、その行動は常に監視下にあり、まるで家畜のように飼育されているかのような屈辱と無力感を味わわされます。
特にリーダー格である「刺す女」(水川あさみ)が放つ圧倒的な存在感は、二人の抵抗する意思を削いでいきます。
萱島は次第に、女たちの行動が単なる狂気ではなく、森の自然と深く結びついた儀式的な意味を持つのではないかと感じ始めます。
対照的に、あくまで現実的な思考に固執する宇和島は、女たちへの反抗的な態度を強め、状況をさらに悪化させていくのでした。
【転】唄う六人の女
物語が大きく転換し、この村と女たちの正体が明らかになります。
萱島は、女たちが人間ではなく、この森そのものに宿る精霊のような存在であるという衝撃的な事実に気づきます。
彼女たちの唄や踊りは、森の生命力を維持し、自然の摂理を司るための神聖な儀式だったのです。
萱島が売却しようとしていた山は彼女たちの聖域であり、実は彼の父親は生前、その土地の守り手として女たちと共生していたのでした。
女たちが二人を捕らえたのは、宇和島が持ち込んだ化学物質によって森が汚染され始めたためであり、森を守るための自衛行為だったのです。
父親が遺した手紙を発見し、全ての真実を知った萱島は、自然を破壊しようとした自らの愚行を深く悔い、森の一部として生きる運命を受け入れ始めます。
【結】唄う六人の女
最後まで現実を受け入れず、森を破壊してでも脱出しようと暴走した宇和島は、自然の怒りを買ったかのように、森の植物に身体を絡め取られ、ついには土の養分として吸収され消滅してしまいます。
彼の存在は、自然のサイクルの中に完全に還されたのです。
一方、全てを受け入れた萱島は、自ら服を脱ぎ捨て、森と完全に一体化します。
彼はもはや都会のビジネスマンではなく、女たちと共に唄い踊ることで森を守る、新たな守護者となったのです。
ラストシーン、かつての自分と同じようにスーツを着て土地開発のために森へ入ってくる男の姿を、森の奥から静かに見つめる萱島の姿が映し出されます。
自然と人間の対立と共生の物語が、これからも永遠に繰り返されていくことを示唆して、物語は静かに幕を閉じます。
唄う六人の女の感想
本作は、自然への畏敬の念と現代社会が抱える環境破壊への痛烈な警鐘を、極めて独創的な寓話として描き出した傑作です。
石橋義正監督特有の、耽美でありながらどこかグロテスクな映像美は圧巻で、鬱蒼とした森の生命力や妖しさがスクリーンから溢れ出してくるようでした。
特に、セリフを極限まで排し、音楽とコンテンポラリーダンスで物語や感情を表現する演出は挑戦的かつ見事です。
俗物的な人間を体現した山田孝之と、次第に自然へと回帰していく竹野内豊の対照的な演技、そして何より言葉を発さず身体表現のみで森の意志を体現した六人の女たちのパフォーマンスには魂を揺さぶられました。
宇和島が森に吸収されるシーンは、その恐ろしさと映像的な美しさが相まって強く印象に残っています。
観終わった後には、美しくも恐ろしい自然の前に人間の傲慢さを突き付けられたような、一種の畏怖の念と深い余韻に包まれました。
唄う六人の女のおすすめ理由
独創的な世界観、寓話性の高い物語、そして俳優陣の卓越した身体表現を高く評価し、4.2というスコアにしました。
特に、セリフに頼らず映像と音楽、ダンスで物語を紡ぐというアート性の高い試みは、他に類を見ない魅力があります。
しかし、物語の解釈を観客に委ねる部分が多く、説明的な要素が少ないため、人によっては不親切で難解だと感じる可能性があります。
エンターテイメントとしての分かりやすさよりも芸術性を重視した作風であるため、観る人を選ぶ作品であることは間違いありません。
この挑発的で挑戦的なスタイルが、万人に勧められる満点ではなく、この評価に至った理由です。
唄う六人の女のその他情報
第28回釜山国際映画祭のジソク部門に正式出品されるなど、海外の映画祭で注目を集めました。
国内での評価は、石橋義正監督のファンやアート系映画を好む層からは「唯一無二の傑作」として熱狂的に支持される一方、物語の不条理さや難解さから「意味が分からない」といった否定的な意見も多く、賛否がはっきりと分かれる結果となりました。
特定の賞レースを席巻するタイプではありませんが、その強烈な個性でカルト的な人気を誇る作品として語り継がれていくでしょう。


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