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蛇にピアスのあらすじ紹介
【起】蛇にピアス
19歳のルイは、クラブで出会った赤毛で顔中にピアスをした男アマに惹かれます。
彼のスプリットタンに魅了されたルイは、自らも身体改造の世界に足を踏み入れることを決意します。
生きている実感を得られない空虚な日常から逃れるように、ルイはアマに舌にピアスを開けてもらい、痛みの中に存在証明を見出そうとします。
この出会いをきっかけに、ルイはアマの紹介で彫り師のシバと出会います。
シバのサディスティックな魅力と、彼の施す刺青の美しさに惹かれたルイは、背中一面に龍と麒麟の刺青を彫ることを決意し、アマとの同棲生活を始めます。
この決断は、彼女を予測不能で危険な愛と痛みの渦中へと引きずり込んでいく序章となりました。
【承】蛇にピアス
アマとの同棲生活を始め、シバのスタジオに通う日々が始まります。
ルイはピアスホールを拡張し、刺青が彫られていく激しい痛みに、これまで感じたことのない生の充足感を覚えます。
彼女は、子供のように純粋でありながら予測不能な暴力性を持つアマの愛情と、サディスティックな行為で彼女を支配しようとするシバの歪んだ愛情という、二つの対極的な愛の間で心を揺さぶられます。
アマはルイを心から愛する一方で、その感情をうまく表現できずに暴力を振るい、シバはルイの身体を自らの作品として扱い、痛みを与えることで彼女を支配します。
この歪な三角関係の中で、ルイのアイデンティティは曖昧になり、痛みと快楽、愛と暴力の境界線が次第に溶けていくのでした。
【転】蛇にピアス
平穏に見えた奇妙な共同生活は、アマの突然の失踪によって崩壊します。
ルイは必死にアマの行方を探しますが、何の手がかりも得られません。
そんなルイの不安を煽るかのように、シバはアマが過去にヤクザを殺害したという衝撃的な事実を告げ、彼が事件のことで追われているのではないかと示唆します。
アマを信じたい気持ちとシバの言葉への疑念に苛まれるルイ。
アマの不在は、シバのルイに対する支配欲をさらに増幅させ、彼のサディスティックな行為はエスカレートしていきます。
精神的に追い詰められたルイは、現実と虚構の区別がつかなくなり、シバに心身ともに支配されていきます。
アマの失踪は、二人の関係をより危険で破滅的なものへと変質させてしまいました。
【結】蛇にピアス
物語の終盤、ルイはアマの失踪に関する戦慄の真実を突きつけられます。
アマを殺害し、その遺体をバラバラにした犯人は、シバ本人だったのです。
シバはルイを独占したいという歪んだ欲望から、邪魔な存在となったアマを殺害したのでした。
ルイは、シバの部屋で偶然にもアマの舌を発見し、全てを悟ります。
絶望の淵に立たされながらも、彼女はシバに施術を続けさせ、背中の龍の刺青に最後の「眼」を入れることで、その作品を完成させます。
最愛の男を殺した男の手によって、自らの身体が完成するという究極の皮肉と痛みを受け入れたルイ。
全ての痛みと喪失を経て、彼女は虚無の中に佇みながらも、自らの足で生きていくことを選んだかのような微かな意志を瞳に宿し、物語は幕を閉じます。
蛇にピアスの感想
この映画は、痛みを通じてしか生の実感を得られない現代人の空虚感と、アイデンティティの探求という重いテーマを描ききった作品ですます。
監督である蜷川実花の真骨頂である極彩色の映像美が、退廃的でグロテスクな物語世界と鮮烈なコントラストを生み出し、観る者の脳裏に焼き付きます。
特に、主演の吉高由里子の演技は圧巻でした。
虚ろな瞳の中に宿る渇望や、痛みと快楽の間で揺れ動く繊細な表情は、ルイというキャラクターに強烈なリアリティを与えています。
高良健吾の純粋な狂気、ARATA(井浦新)の妖しい魅力も素晴らしかったです。
ラスト、シバに龍の眼を入れられるルイの表情は、絶望と諦観、そして微かな生の肯定が入り混じった複雑な感情を見事に表現しており、最も印象に残っています。
鑑賞後は強烈な虚無感と、しかし同時に美しさに打ちのめされるという不思議な感覚に包まれました。
蛇にピアスのおすすめ理由
蜷川実花監督による鮮烈な映像美と、吉高由里子をはじめとする俳優陣の鬼気迫る体当たりの演技が圧倒的です。
痛みや死といった重いテーマを扱い、観る人を選びますが、人間の根源的な孤独や愛への渇望をえぐり出すような物語の力強さは唯一無二です。
特に、身体改造というフィルターを通して描かれる自己確認の危うさと切実さは、心に深く突き刺さります。
ただ、その過激な描写と救いのない展開は、観る人によっては強い不快感を抱く可能性もあるため、満点の5.0ではなく、高く評価しつつも普遍的なオススメとは言えない点を考慮し4.0としました。
蛇にピアスのその他情報
第32回日本アカデミー賞にて、吉高由里子が新人俳優賞を、美術の佐々木敬が優秀美術賞を受賞しました。
また、第51回ブルーリボン賞でも吉高由里子が新人賞を受賞するなど、主演の演技が高く評価されました。
原作小説の芥川賞受賞という話題性もあり、公開当時は大きな注目を集め、その衝撃的な内容と映像表現は賛否両論を巻き起こしました。


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