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イップ・マン 葉問のあらすじ紹介
【起】イップ・マン 葉問
1930年代、武術の盛んな中国広東省仏山。
詠春拳の達人イップ・マンは、裕福な家庭で妻と息子と穏やかに暮らしていました。
彼は道場を開かず、武術を金儲けの手段とせず、友人との手合わせや自己の研鑽に静かに打ち込む日々を送っていました。
その謙虚な人柄と圧倒的な実力は、仏山の人々から尊敬を集めていました。
ある日、北方の武術家である金山找が仏山の道場を次々と破り、イップ・マンに挑戦状を叩きつけます。
イップ・マンは家族が見守る中、軽やかに、しかし決定的な実力差を見せつけて金山找を退け、その武術家としての名声を不動のものとしました。
しかし、この時点での彼の武術はあくまで平和な日常を彩る一要素に過ぎませんでした。
【承】イップ・マン 葉問
1937年、日中戦争が勃発し、日本軍が仏山を占領します。
イップ・マンの平和な生活は一変し、彼は豪邸も財産も全て失い、家族を養うために炭鉱での過酷な肉体労働に身をやつすことになりました。
武術家としての誇りを胸にしまい、耐え忍ぶ日々を送るイップ・マン。
その一方で、日本軍の三浦将軍は、中国武術家たちを空手の稽古台にし、勝てば米を与えるという非人道的な武術試合を始めます。
イップ・マンの旧知の仲である武痴林もこの試合に参加しますが、彼は三浦の部下である佐藤主任に逆らったことで見せしめに射殺されてしまいます。
友の無残な死は、これまで怒りを抑え込んできたイップ・マンの心に、静かだが消えない復讐の炎を灯すことになりました。
【転】イップ・マン 葉問
友である武痴林の行方を追って日本軍の道場に足を踏み入れたイップ・マンは、米一袋のために同胞たちが尊厳を踏みにじられ、命を落としていく惨状を目の当たりにします。
そして、武痴林が既に殺されていた事実を知った時、彼の怒りはついに限界を超えました。
彼は三浦将軍の前で「10人と戦わせてくれ」と宣言し、たった一人で10人の空手家と対峙します。
それまでの穏やかな達人の姿は消え、怒りに燃える彼の詠春拳は凄まじい破壊力で相手を次々と粉砕していきます。
その圧倒的な強さは、武を尊ぶ三浦将軍をも驚愕させ、イップ・マンの名は単なる武術家としてではなく、日本軍に抵抗する中国民衆の希望の象徴として知れ渡ることになるのです。
【結】イップ・マン 葉問
イップ・マンの強さに深い感銘を受けた三浦将軍は、彼との公式な公開対決を申し込みます。
多くの民衆が見守る仏山の広場で、二人の達人の戦いが始まりました。
試合前、三浦はイップ・マンに日本軍の武術指導者になるよう誘いますが、彼は「武術に優劣はないが、人間の品格には優劣がある」と、その申し出を毅然と断ります。
試合は壮絶を極め、三浦の剛の空手に対し、イップ・マンは柔の詠春拳で応戦します。
激闘の末、イップ・マンはついに三浦を打ち破り、勝利を収めました。
民衆から歓声が沸き起こるその瞬間、卑劣な佐藤主任が背後からイップ・マンを銃撃します。
民衆の怒りが爆発し暴動が起きる混乱の中、イップ・マンは友人の助けで救出され、家族と共に香港へと脱出するのでした。
彼の戦いは、一人の勝利ではなく、抑圧された民族の誇りを守り抜いた伝説となりました。
イップ・マン 葉問の感想
この映画は、単なる超絶カンフーアクションの枠を超え、一個人の尊厳、揺るぎない家族愛、そして民族の誇りをテーマに据えた、極めて重厚な人間ドラマです。
平和な時代には武術を静かに嗜む紳士であったイップ・マンが、戦争という極限状況下で、愛する者と民衆の尊厳を守るためにその拳を振るう姿は、真の強さとは何かを我々に問いかけます。
特に、静と動のコントラストを巧みに用いたウィルソン・イップ監督の演出は秀逸で、ドニー・イェンが見せる神速の詠春拳は、もはや芸術の域に達しています。
主演のドニー・イェンは、物静かで知的な達人の風格と、怒りを爆発させた時の凄まじい気迫を見事に体現しており、彼以外にこの役は考えられません。
最も心を揺さぶられたのは、友の死を知り「10人と戦う」と宣言するシーンです。
それまでの抑制から解き放たれた怒りの拳は、観る者に強烈なカタルシスを与えてくれます。
鑑賞後は、その壮絶な戦いへの興奮と、彼の生き様が示す人間の気高さに対する深い感動に包まれました。
イップ・マン 葉問のおすすめ理由
ドニー・イェンが披露する詠春拳のアクションは、スピード、キレ、リアリティの全てにおいてカンフー映画史上最高峰と言える完成度です。
しかし本作の真価は、アクションだけでなく、戦争という過酷な運命に翻弄されながらも、家族愛と民族の誇りのために戦う男の姿を描いた重厚なドラマ性にあります。
そのため、アクションファン以外も深く感情移入できる普遍的な物語となっています。
控えめな達人が怒りを爆発させる瞬間のカタルシスは絶大で、エンターテイメントとしての訴求力も極めて高いです。
一部、歴史観や描写が一方的に感じられる部分もあるため満点は避けましたが、それを差し引いても傑作と呼ぶにふさわしい作品です。
イップ・マン 葉問のその他情報
第28回香港電影金像奨で最優秀作品賞および最優秀アクション設計賞を受賞。
その他、国内外の映画賞で多数の賞を獲得し、批評家から絶賛されました。
興行的にも中華圏で記録的な大ヒットとなり、主演のドニー・イェンを国際的なアクションスターの地位に押し上げました。
本作の成功により、ブルース・リーの師匠として一部で知られていた葉問(イップ・マン)の名は世界的に有名になり、続編や関連作品が次々と製作される一大ムーブメントを巻き起こした記念碑的作品です。


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