カラオケ行こ! (2024) ネタバレあらすじ紹介

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カラオケ行こ!のあらすじ紹介

【起】カラオケ行こ!

合唱部部長である中学3年生の岡聡実は、ある雨の日、森の中で見知らぬ男から突然声をかけられます。
その男こそ、四代目祭林組の若頭補佐、成田狂児でした。
狂児は、組で年に一度開催されるカラオケ大会で最下位になった者が、組長からこの世で最も恐ろしいとされる「ある刺青」を彫られるという罰ゲームを何としても回避したい一心で、歌が上手い人間を探していました。
そこで白羽の矢が立ったのが、合唱コンクールの映像で見た聡実だったのです。
ヤクザという存在に恐怖を感じながらも、その強引さに押し切られる形で、聡実は狂児の歌のレッスンを引き受けることになります。
こうして、思春期真っ只中の中学生と、絶対に歌がうまくならなければならないヤクザとの、奇妙で危険な関係が幕を開けるのでした。

【承】カラオケ行こ!

週に一度のレッスンが始まりますが、狂児の歌唱力は絶望的で、聡実は頭を抱えます。
聡実は変声期に差し掛かっており、得意だったソプラノが出せなくなることへの恐怖と焦りを抱えていました。
その悩みを狂児に打ち明けたことで、二人の間には単なる歌の師弟関係を超えた奇妙な友情が芽生え始めます。
狂児は聡実を組の事務所に連れて行ったり、他の組員たちとのカラオケに付き合わせたりと、ヤクザの世界に引き込んでいきます。
聡実は、狂児の裏表のない人柄や、一見怖いがどこか間抜けな組員たちとの交流を通して、当初抱いていた恐怖心を少しずつ解きほぐしていきます。
しかし、自分の世界とはあまりに違う狂児たちとの関係が深まるにつれ、聡実は言いようのない罪悪感と、自分のアイデンティティが揺らぐような感覚に苛まれていくのでした。

【転】カラオケ行こ!

合唱部の最後のコンクール本番、聡実はプレッシャーと変声期への恐怖からソプラノパートで声が出なくなり、合唱部は惨敗してしまいます。
歌に対する自信を完全に失った聡実は、自分を追い詰めた元凶である狂児との関係を断ち切ろうと決意し、レッスンを辞めることを告げます。
しかし、聡実の苦悩を察した狂児は、彼を突き放すことなく、最後のレッスンとして映画に誘います。
そして迎えたカラオケ大会当日、聡実はいてもたってもいられず、大会会場であるスナックへと向かいます。
するとそこには、敵対組織との抗争で腕を刺され、満身創痍の狂児の姿がありました。
聡実の指導の成果を見せるため、そして聡実自身のために、狂児は痛みをこらえながらステージに立つのです。
その姿を見て、聡実は初めて狂児の本当の気持ちに触れることになります。

【結】カラオケ行こ!

狂児は、聡実から教わった「歌の世界に入り込む」というアドバイスを胸に、血を流しながらも渾身の力で「紅」を絶唱します。
その歌は技術的には拙いものの、聡実との日々と自らの生き様を乗せた魂の叫びとなり、組長をはじめとする組員たちの心を激しく揺さぶりました。
結果、狂児は最下位を免れ、罰ゲームの刺青は回避されます。
狂児の歌を通じて、歌の本当の意味を悟った聡実は、変声期という現実を受け入れ、自分の未来へと歩み出す勇気を得ます。
大会後、狂児は姿を消しますが、聡実の元には彼からのカセットテープが届きます。
そこには感謝の言葉と共に、聡実が大人になるまで会わないというメッセージが残されていました。
大学生になった聡実は、かつて狂児が歌った「紅」をカラオケで熱唱し、二人の奇妙な友情に思いを馳せるのでした。

カラオケ行こ!の感想

本作は、ヤクザと中学生という決して交わるはずのない二人の出会いがもたらす、奇妙で愛おしい友情を描いた傑作です。
最大のテーマは「変化の受容」であり、聡実の変声期という肉体的な変化と、狂児との出会いによる精神的な成長が、見事にシンクロしていました。
山下敦弘監督の演出は、原作の持つシュールな笑いと、思春期の繊細な痛みを絶妙なバランスで描き出し、特にクライマックスのカラオケシーンでの「紅」の使い方は圧巻の一言です。
成田狂児を演じた綾野剛さんの、色気と狂気を内包しながらもどこかチャーミングなキャラクター造形は完璧で、対する岡聡実役の齋藤潤さんも、揺れ動く少年の心を繊細に表現しきっていました。
最も印象的だったのは、狂児が姿を消す前に残したカセットテープのメッセージです。
観終えた後は、大笑いしたかと思えば胸が締め付けられるような切なさに包まれ、温かくもほろ苦い感情が心に残りました。

カラオケ行こ!のおすすめ理由

原作漫画の持つ独特の空気感を完璧に再現しつつ、脚本家・野木亜紀子氏による映画ならではの再構築が見事である点が最大の理由です。
綾野剛氏と齋藤潤氏のキャスティングは奇跡的とも言えるほどハマり役で、二人の間に流れる絶妙な緊張感と信頼感が物語に深い奥行きを与えています。
コメディとしての笑いの質が非常に高く、同時に思春期の痛みや人生の切なさといったドラマ部分もしっかりと描かれており、エンターテインメント性と芸術性を高次元で両立させています。
音楽の使い方も秀逸で、X JAPANの「紅」が単なる小道具ではなく、登場人物の魂の叫びとして機能している点も高く評価できます。
これらの要素が完璧に調和した、近年稀に見る傑作コメディドラマであるため、4.8という高評価に至りました。

カラオケ行こ!のその他情報

第47回日本アカデミー賞において、優秀作品賞、優秀監督賞(山下敦弘)、優秀脚本賞(野木亜紀子)、優秀主演男優賞(綾野剛)、優秀助演男優賞(齋藤潤)など主要8部門で優秀賞を受賞。
さらに齋藤潤は新人俳優賞も受賞するなど、批評家から極めて高い評価を受けました。
また、Filmarks主催の「FILMARKS AWARDS 2023」では邦画部門のグランプリを獲得。
観客からの支持も厚く、興行収入も好調を記録し、2024年を代表する邦画の一本として広く認知されています。

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