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すずめの戸締まりのあらすじ紹介
【起】すずめの戸締まり
九州の静かな港町で叔母と暮らす高校生、岩戸鈴芽は、通学途中に「閉じ師」を名乗る青年、宗像草太と出会います。
彼は災いの元となる「後ろ戸」を探しており、すずめは彼を追って廃墟の温泉施設へと向かいます。
そこで開かれた後ろ戸を見つけたすずめは、誤って要石である猫の姿をした神・ダイジンを解放してしまいます。
その結果、後ろ戸から巨大なミミズが噴出し、草太と共にそれを封じ込めることに成功しますが、ダイジンの呪いによって草太はすずめが大切にしていた三本脚の子供椅子に姿を変えられてしまうのでした。
【承】すずめの戸締まり
椅子になった草太とすずめは、日本各地で次々と開く後ろ戸を閉じるため、そして草太を元の姿に戻すために、元凶であるダイジンを追いかける旅に出ます。
愛媛のミカン農家の少女、神戸のスナックのママなど、旅の途中で出会う人々の温かさに触れながら、彼らの抱える「後ろ戸」=打ち捨てられた場所の記憶と想いを鎮めていきます。
しかし、ダイジンは「すずめ、すき」「うちの子になる?」などと無邪気にすずめに懐く一方で、行く先々で災いを引き起こすかのような行動をとり、その真意は謎に包まれていました。
旅には草太の友人である芹澤も加わり、一行は東京へと向かいます。
【転】すずめの戸締まり
東京上空に出現した最大級のミミズを前に、草太はすずめを守るため、自らがダイジンに代わる新たな要石となることを選び、常世へと姿を消してしまいます。
愛する人を失ったすずめは絶望しますが、草太の祖父から閉じ師の覚悟と常世の存在を聞かされ、彼を助け出すことを固く決意します。
そこに現れた巨大な黒猫の左大臣(サダイジン)は、ダイジンが要石の役目から解放されたがっていたこと、そしてすずめに懐いたのは彼女が自分を解放してくれると信じたからだと明かします。
すずめは、自分が幼い頃に迷い込んだ場所こそが常世への入り口であり、東日本大震災で母を失った被災者であったという、封じ込めていた過去と向き合うことになります。
【結】すずめの戸締まり
すずめは心配して追いかけてきた叔母の環と共に、故郷である東北へ向かいます。
実家の跡地で、幼い自分が開けてしまった常世への扉を見つけたすずめは、ダイジンとサダイジンの先導で常世へと足を踏み入れます。
そこには要石となり凍りついた草太と、暴れ狂うミミズがいました。
すずめは「草太さんのいない世界が、私は怖い」と叫び、人々がかつてそこで生きていた記憶を呼び覚まし、祝詞を唱えることでミミズを鎮め、草太を救出します。
そして、常世を彷徨う幼い自分と対面し、かつて自分を励ましてくれたのが未来の自分であったことを悟ります。
彼女は母の形見である椅子を渡し、「あなたは光の中で大人になっていく」と未来を告げ、過去の自分を送り出します。
現実世界に戻ったすずめと草太は再会を約束し、すずめは環と共に日常へと帰還するのでした。
すずめの戸締まりの感想
東日本大震災という未曾有の災害をファンタジーに昇華し、鎮魂と再生を描いたテーマ性に深く胸を打たれました。
新海誠監督の真骨頂である圧倒的な光の映像美と、RADWIMPSと陣内一真氏による荘厳かつエモーショナルな音楽が、ロードムービー形式の脚本と完璧に融合し、観る者を物語の世界へ引き込みます。
特に、主人公すずめを演じた原菜乃華さんの、等身大の少女の揺れ動く感情から困難に立ち向かう力強さまでを見事に表現した声の演技は圧巻でした。
草太が要石になるシーンの悲壮感と、ラストで幼い自分自身に未来を告げる場面は涙なくしては見られません。
喪失の痛みを描きながらも、最終的には「行ってきます」と「おかえりなさい」が繰り返される日常の尊さと、未来への確かな希望を感じさせる、力強くも優しい傑作です。
すずめの戸締まりのおすすめ理由
日本の現実的な傷跡である「震災」という極めてデリケートなテーマに正面から向き合い、エンターテインメントとして昇華させた挑戦的な姿勢を最大限に評価します。
また、新海誠作品の集大成ともいえる圧倒的な映像クオリティと音楽の融合は、他の追随を許さないレベルに達しています。
しかし、ロードムービーの道中で出会う人々とのエピソードがやや駆け足で、物語の進行上、都合よく配置されているように感じられる部分もありました。
キャラクターの掘り下げにもう一歩踏み込んでいれば、さらに感情移入度が高まったと考え、満点から僅かに引いた4.2点としました。
すずめの戸締まりのその他情報
国内では第46回日本アカデミー賞で最優秀音楽賞を受賞し、興行収入は149.4億円を記録する大ヒットとなりました。
国外でもその評価は高く、アニメーション界のアカデミー賞と称される第50回アニー賞の複数部門にノミネートされたほか、第80回ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞にノミネート、さらに日本の長編アニメーション映画としては「千と千尋の神隠し」以来21年ぶりとなる第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門への正式出品という快挙を成し遂げ、世界的な注目を集めました。


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